解剖学者であり発生学者である三木成夫(1925-1987)を天才だとか巨人
だとか、ジャンルを超越した思想家、自然哲学者だと、賞賛する声は
絶えないそうだが、
いまならば 三木成夫の大きさが、 懐の深さがよくわかる。
たとえば、三木成夫が著した発生学の本のなかで「老子」「道」が解説される。
「ゲーテ」「ファウスト」が「伊勢神宮 遷宮の意味」「柳田国男」が・・・。
生物の発生を説明する文脈に違和感なく。
そして驚くことに、
「らせん」「渦」に関しては、文中に何十回と繰り返されることになる。
。。。。。。。。。。。。。。。
(●は 「生命形態学序説」三木成夫から抜粋)
(○は 「胎児の世界」三木成夫から抜粋)
●「ラセンの渦巻きは地・水・火・風のどのひとつにも
見られるのでなければならない。
火山の噴煙、台風の渦、ジェット気流そして濁流などなど、
およそ自然の流れのなかで渦巻きの形態を取らないものは
なにひとつないといっても過言ではないだろう。
そしてこのかたちはついに星雲の世界にまで及ぶことになる。
無数の天体からなるこのかたまりは、悠久のときをかけて
渦を巻きながら自らはさらに大きな渦巻きの一員となり、
そしてこの渦がもうひとつ上の渦に入り、やがてこうした渦巻きの
また渦巻きのひとつの極限にかの『宇宙球』が成立してくるという。
(略) ラセンの形そのものをひとつの『原型』として考察する事が
可能であろう。」
●「ゲーテをして『生の根本原理』とまでいわしめた、あの蔓の
描き出すラセンの模様は、いまや宇宙の象形文字として われわれの
前に姿をあらわすことになった。」
○「両端で固定された内臓の管も渦を巻く。たとえば、口と肛門
の両端で固定された腸管は途中で左巻きと右巻きに捻転を起こし、
また肝臓と鰓で固定された心臓の管も左右に捩れながら肥大していく。
こうした捩れは卵管や精管にも起こり、しかもこれらの管すべては、
その壁が互いに交しながら螺旋状に走る線維層でしっかり固められる。」 。。。。。。。。。。。。。。。。。。
三木成夫は生前 間違いなく、
”ヒトの発生に螺旋渦流のフォースが関与している” ことをはっきり認識していた。
エネルギーはかならず渦を巻く。
そのエネルギーの流れに沿って、水や空気や化学物質が反応しあう。
流れ通りに渦巻きの模様を形作りながら、物質としての人体・植物・天体が
出来上がる。(健康人の立派なウ○チだってとぐろ巻く)
この世界のすべては、
はじめに渦ありき だ。
自然に目を向け耳を傾け、その造形から宇宙のフォースを感じ取ることが大事だよ、と
三木成夫の著書は教えてくれているのではないのか。

はくけい堂
2011.11.25